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更新日付:2024年4月9日 / ページ番号:C095353
ロタウイルス感染症は、ロタウイルスによって引き起こされる急性の胃腸炎で、乳幼児期(0~6歳ころ)にかかりやすい病気です。ロタウイルスは感染力が強く、ごくわずかなウイルスが体内に入るだけで感染してしまいます。通常、5歳までにほぼすべての子どもがロタウイルスに感染するといわれています。大人はロタウイルスの感染を何度も経験しているため、ほとんどの場合、軽い症状で済むか症状が出ません。しかし、乳幼児は、激しい症状が出ることが多く、特に初めて感染したときに症状が強く出ます。主な症状は、突然の嘔吐、発熱に続き、水のような下痢がみられます。回復には1週間ほどかかり、多くは自然に回復しますが、脱水症状を引き起こすと、点滴が必要となったり、入院が必要になることがあります。5歳までの急性胃腸炎の入院患者のうち、40~50%前後はロタウイルスが原因です。ロタウイルスワクチンの接種を受けることでロタウイルスに起因する胃腸炎の発症を70~80%減らし、入院が必要な重症化を防ぐ効果があるとされています。生後すぐに感染する場合もあるので、ワクチンの接種は早い時期に完了するようにします。
現在、製品名で「ロタリックス(1価)」と「ロタテック(5価)」の2種類のロタウイルスワクチンが使用されています。いずれも病原性を弱めて増殖させ、精製後シロップ状にした飲む生ワクチンです。「ロタリックス(1価)」は一番多いとされている型のロタウイルスに対応して作られたものですが、交差反応といって、タイプの似ている他の4つの型にも防御反応を示し、免疫を獲得できることが分かっています。「ロタテック(5価)」は5つの型のロタウイルスに対応して作られた飲む生ワクチンです。どちらのワクチンもロタウイルスに対し、重症化予防に差はなく有効性は同等と考えられています。途中からワクチンの種類を変更することはできませんので、最初に接種したワクチンを2回目以降も接種することになります。
【ロタウイルスワクチンの主な副反応】
一般的にワクチン接種により、副反応がみられることがあります。また、極めてまれですが、重い副反応が起こることがあります。これまでの報告では、5%未満に副反応として、下痢、嘔吐、便秘、胃腸炎等がみられます。まれに生じる重い副反応としては、アナフィラキシー様症状(血管浮腫、全身のひどいじんましん、呼吸困難など)、腸重積症があります。
【ロタウイルスワクチン接種後の腸重積症について】
腸重積症は、ロタウイルスワクチンの接種に関わらず、乳幼児がかかることのある病気です。0歳児は月齢が進むと腸重積症にかかりやすくなり、まれな病気ではありません。腸の一部が腸管内にはまり込み、腸の血流が悪くなることで腸の組織に障害を起こすことがあるため、速やかな治療が必要となります。特に、ロタウイルスワクチン接種を受けてから約1~2週間の間は腸重積症のリスクが通常より高まるとする研究報告があります。
(1)体の中で最も大切な部分といえる脳や脊髄を包んでいる膜を髄膜といい、この髄膜に細菌やウイルスが感染して炎症が起こる病気が髄膜炎です。中でも、細菌が原因の「細菌性髄膜炎」は、治療後の経過が悪く後遺症が残るなどのため、特に問題となります。細菌性髄膜炎の初期症状は、発熱や嘔吐、不機嫌、けいれんなどで、風邪などの他の病気の症状と似ているため、早期に診断することはとても難しい病気です。
(2)細菌性髄膜炎のうち、「インフルエンザ菌b型(ヒブ)」という細菌によるものが「ヒブ髄膜炎」です。5歳未満の乳幼児がかかりやすく、特に生後3か月から2歳になるまではかかりやすいので注意が必要です。ヒブは、冬に流行するインフルエンザの原因である「インフルエンザウイルス」とは全く別のものです。また、ヒブは乳幼児が感染しても抗体(免疫) ができず、繰り返し感染することがあります。
(3)ヒブ髄膜炎にかかると、1か月程度の入院と抗生物質による治療が必要となります。しかし、治療を受けても3~6%の乳幼児が死亡し、生存した子どもの20%に難聴などの後遺症を残すと言われています。さらに、最近では抗生物質の効かない菌(耐性菌)も増えており、治療が困難になっています。
(4)ヒブはその他にも、敗血症、喉頭蓋炎、肺炎などの重篤な全身感染症を引き起こします。
(5)ヒブ髄膜炎は、平成20年まで増加傾向にありましたが、ワクチン接種緊急促進事業(費用助成制度)開始以降の平成24年には激減しています。
「ヒブワクチン」は、4回の接種を受けた人のほぼ100%に抗体(免疫)ができ、「ヒブ髄膜炎」に対する高い予防効果が認められています。
【インフルエンザ菌b型(ヒブ)ワクチンの主な副反応】
「ヒブワクチン」の接種後に、他のワクチン接種でもみられるのと同様の副反応がみられますが、通常は一時的なもので、数日で消失します。最も多くみられるのは接種部位の発赤(赤み)や腫脹(はれ)です。また発熱が接種された人の数%に起こります。まれに生じる重い副反応として、ショック、アナフィラキシー様症状(血管浮腫、全身のひどいじんましん、呼吸困難など)、血小板減少性紫斑病、けいれんが現れることがあります。「ヒブワクチン」は、製造の初期段階に、ウシの成分(フランス産ウシの肝臓および肺由来成分、ヨーロッパ産ウシの乳由来成分、米国産ウシの血液、心臓由来成分および骨格筋由来成分、ブラジル産ウシの心臓由来成分)が使用されていますが、その後の精製工程を経て、製品化されています。このワクチンによるTSE(伝達性海綿状脳症)伝播のリスクは、理論的には極めて低いと考えられています。このワクチンはすでに世界100カ国以上で使用されていますが、このワクチンの接種が原因でTSE にかかったという報告はありません。
※令和6年4月1日から、5種混合ワクチン(ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ・ヒブ)が定期予防接種となりました。5種混合ワクチンを接種する場合は、ヒブワクチンの接種は必要ありません。
(1)肺炎球菌は、集団生活が始まるとほとんどの子どもが鼻の奥に保菌するようになります。この菌が免疫力の低下など何らかのきっかけで体の中に入り込むと、肺炎や中耳炎、髄膜炎などを起こすことがあります。
(2)髄膜炎を起こした場合には2%の子どもが亡くなり、10%に難聴、精神の発達遅滞、四肢の麻痺、てんかんなどの後遺症を残すと言われています。また、小さい子どもほど発症しやすく、特に0 歳児でのリスクが高いとされています。
(3)体の中で最も大切な部分といえる脳や脊髄を包んでいる膜を髄膜といい、この髄膜に細菌やウイルスが感染して炎症が起こる病気が髄膜炎です。中でも、細菌が原因の「細菌性髄膜炎」は、治療後の経過が悪く後遺症が残るなど、特に問題となります。細菌性髄膜炎の初期症状は、発熱や嘔吐、不機嫌、けいれんなどで、風邪などの他の病気の症状と似ているため、早期に診断することはとても難しい病気です。
(4)小児の肺炎球菌による髄膜炎は、平成20年~平成22年には5歳未満人口10万人あたり約2.8 人がり患していましたが、ワクチンが普及した平成26年には約0.8 人と減少しています。
肺炎球菌には、90 以上の種類があり、それぞれ特徴が異なります。小児用肺炎球菌ワクチンには、13種類の肺炎球菌の成分が含まれており、主にこれらに対して予防効果を発揮します。一方で、ワクチンに含まれない種類の肺炎球菌の多くは予防できないため、ワクチンを接種しても肺炎球菌感染症を発症することがあります。
【小児用肺炎球菌ワクチンの主な副反応】
「小児用肺炎球菌ワクチン」の接種後に、他のワクチン接種でもみられるのと同様の副反応がみられますが、通常は一時的なもので、数日で消失します。最も多くみられるのは接種部位の発赤(赤み)や腫脹(はれ)です。また、国内の臨床試験報告において、約3割の人に発熱が起こり、接種頻度に合わせて発熱の発現率が高くなる傾向にあるとされています。まれに生じる重い副反応として、ショック、アナフィラキシー様症状(血管浮腫、全身にひどいじんましん、呼吸困難など)、血小板減少性紫斑病、けいれんが現れることがあります。
B型肝炎ウイルス(以下、ウイルス)は、ウイルスを含む血液や体液との接触により感染します。感染した人の年齢や免疫状態によって、一過性感染または持続感染を起こします。一過性感染は大人で起こりやすく、持続感染は乳幼児で起こりやすいとされています。持続感染した人の体内には、ウイルスが居るため、持続感染している人をキャリアと呼びます。キャリアは、次の感染の原因となることがあります。
感染経路は、キャリアの母親から子どもに感染する垂直感染と、それ以外の水平感染に分けられます。わが国では、子どもの日常生活の中で水平感染が起こったとみられる事例が報告されています。新生児や乳幼児期に感染すると持続感染になりやすい理由は、免疫が未熟なために侵入してきたウイルスを排除する免疫反応が起こらない、免疫寛容と呼ばれる状態が影響していると考えられています。そのため、目立った症状も無く、無症候性キャリアと呼ばれる状態で経過します。無症候性キャリアとなった子どもの免疫が成熟する思春期以降、ウイルスを排除する免疫反応が起こり、肝炎を起こします。この肝炎を起こした場合、80~90%で、ウイルスが、セロコンバージョンと呼ばれる、比較的おとなしいタイプへ変化を起こします。この変化が起こると、再び無症候性キャリアに戻り、生涯強い肝炎を発症せずに過ごします。この変化が起こらない、残りの10~20%のキャリアでは、慢性肝炎へと移行します。慢性肝炎へ移行した場合、さらに、肝硬変や肝臓がんへと進行することがあります。乳幼児期の感染や無症候性キャリアの状態、慢性肝炎は自覚症状が無い場合が多いとされています。一過性感染やセロコンバージョンの際の急性肝炎では、強い全身倦怠感、悪心・嘔吐、黄疸などが出現します。急性肝炎発症者の約2%が、命に関わる劇症肝炎を起こすとされています。また、肝硬変や肝臓がんも、肝臓の働きが損なわれ、命に関わる病状です。なお、B型やC型の肝炎ウイルスによる肝炎は、治療薬の開発が進み、適切な時期の治療で、肝硬変や肝臓がんへの進行を回避できるようになってきました。
乳児を対象とするB型肝炎ワクチンの予防接種は、ウイルスに対する免疫を早期に獲得することで、乳幼児期の持続感染を予防します。現在、国内では、製品名で「ビームゲン」と「ヘプタバックス」の2種類のB型肝炎ワクチンが使用されています。いずれも酵母由来の組換え沈降B型肝炎ワクチンです。「ビームゲン」は、従来日本で多いとされていた遺伝子型Cのウイルスを、「ヘプタバックス」は、近年国内で増加傾向にある遺伝子型Aのウイルスを抗原とするワクチンです。どちらのワクチンを接種しても、お互いに遺伝子型の異なるB型肝炎ウイルスに対する感染予防効果があると考えらえています。また、いずれのワクチンも、1988年に発売され、医療従事者などの血液感染防止対策や、乳児に対する垂直感染予防のために使用されてきました。
【B型肝炎ワクチンの主な副反応】
一般的にワクチン接種により、軽い副反応がみられることがあります。また、極めてまれですが、重い副反応が起こることがあります。これまでの報告では、10%程度に副反応が認められ、主な副反応は、倦怠感、頭痛、接種部の腫脹(はれ)、発赤(赤み)、疼痛等でした。まれに生じる重い副反応としては、ショック、アナフィラキシー様症状(全身のひどいじんましん、呼吸困難など)、急性散在性脳脊髄炎、ギラン・バレ症候群、視神経炎、脊髄炎、多発性硬化症、末梢神経障害があります。
(1)ジフテリア
ジフテリアは、ジフテリア菌の飛沫(せきやくしゃみのシブキ)感染で起こります。主にのどに感染しますが、鼻にも感染することがあります。感染しても10%程度の人に症状が出るだけで、残りの人は症状が出ない保菌者となり、その人を通じて感染することもあります。症状は、高熱、のどの痛み、犬の鳴き声のようなせき、嘔吐などの症状が現れ、のどに偽膜と呼ばれる膜ができて窒息することもあります。発病2~3週間後には菌の出す毒素によって心筋障害や神経麻痺を起こすこともあります。
(2)百日せき
百日せきは、百日せき菌の飛沫感染で起こります。症状は、最初は風邪のような症状が現れます。続いてせきがひどくなり、連続的にせきこむようになります。せきの後に急に息を吸い込むので、笛を吹くような音が出ます。熱は通常出ません。乳幼児はせきで呼吸ができず、くちびるが青くなったり、けいれんを起こしたりすることがあります。肺炎や脳症などの重い合併症を起こすこともあり、乳児では死亡することもあります。
(3)破傷風
破傷風は、人から人へ感染するのではなく、土の中にいる破傷風菌が傷口から人の体内へ入ることによって感染します。症状は、最初は、口が開かなくなる、痙笑(引きつった笑顔)等の症状が現れ、やがて全身のけいれんを起こすようになります。治療が遅れると死に至ることもある病気です。
(4)ポリオ(急性灰白髄炎)
ポリオは、ポリオウイルスが人の口に入って、腸の中で増えることで感染します。増えたポリオウイルスは便の中に排泄され、この便を介してさらに他の人に感染します。ポリオウイルスに感染しても、ほとんどの人は症状がなく、5〜 10% の人に風邪のような症状(発熱、頭痛、嘔吐など)が現れます。感染者の0.1% の人に、ウイルスが血液を介して脳・脊髄へ感染し、麻痺を起こすことがあります。このうち一部のものは、永久麻痺を残します。また、延髄麻痺を生じて、呼吸困難を起こし、死亡する場合もあります。
4種混合ワクチンは、ジフテリア菌、百日せき菌、破傷風菌、ポリオウイルスの病原性を無くし、免疫をつくるのに必要な成分を取り出してつくったものです。接種により、疾病そのものを引き起こすことはありませんが、発熱など、軽い副反応がみられることがあります。また、極めてまれですが、重い副反応が起こることがあります。4種混合ワクチン接種後にみられる副反応については以下のとおりです。
【4種混合ワクチンの主な副反応】
局所の発赤、腫脹、水泡、疼痛、硬結等、全身反応として発熱、不機嫌等の症状がみられることがありますが、いずれも一過性で2~3日中に消失します。時に接種後数日を経過してから局所の発赤、腫脹がみられることもあります。また、小さい硬結が1か月くらい残存することがあります。 2回以上の被接種者には、時に著しい局所反応が現れることがありますが、通常、数日中に消失します。
BCGは結核を予防するワクチンです。結核は結核菌の感染で起こります。わが国の結核患者は大幅に減少しましたが、今でも毎年2万人近い人が発病しており、大人から子どもへ感染することも少なくありません。また、結核に対する免疫は、母親から貰うことができないので、乳幼児も感染する危険があります。乳幼児は結核に対する免疫が弱いので、全身性の結核症にかかったり、結核性髄膜炎になることもあり、重い後遺症を残す可能性があります。
BCGの適切な接種は、接種しなかった場合に比べ、結核の発病を1/4程度に抑えます。特に、小児の結核性髄膜炎や粟粒結核など重篤な結核の発病予防に効果があります。どのような予防接種でも、軽い副反応がみられることがあり、また、極めてまれですが、重い副反応が起こることがあります。BCG接種後にみられる副反応は、次のとおりです。
【BCGワクチンの主な副反応】
接種後10日~4週の間に、接種部位に発赤(赤み)、硬結(しこり)、腫脹(はれ)、痂皮(かさぶた)形成等の局所変化が現れます。特に反応が強い場合は膿疱(膿が貯まった水疱)を作ることもありますが、痂皮を形成して1~3か月で消失します。この接種部位の反応は、通常3か月程度で瘢痕(傷あと)化しますが、この時期を越えても乾かず、あるいはいったん瘢痕化したものが湿潤し、潰瘍化することもあります。このような場合は、混合感染の可能性もあります。瘢痕化した針痕が拡大、一部または全部が融合してケロイドを生じてしまうこともあります。
また、接種後に脇の下のリンパ節が腫れることがまれにあります。典型的なものは接種後1~3か月後に発生します。通常は放置しても接種6か月後までに自然に消失します。まれに化膿して、膿が出ることがあります。まれに生じる重い副反応としては、アナフィラキシー様症状(ショック症状、じんましん、呼吸困難など)、全身播種性BCG感染症、骨炎(骨髄炎、骨膜炎)、皮膚結核様病変などが報告されています。
上記5のような副反応は、接種してから5〜6週頃に最も強く現れるとされていますが、結核に感染している人にBCGワクチンを接種した場合、接種してから1週間〜10日以内(多くの場合は3日以内)に同じような症状がみられることがあります。一種のアレルギー反応によるものと考えられていますが、このような現象を「コッホ現象」と呼びます。コッホ現象は結核菌に似た菌(非結核性抗酸菌)に感染した場合でも発生することがあるので、必ずしも結核に感染していることを意味するわけではありませんが、このような症状が発現した場合には、ただちに接種医にご相談ください。
(1)麻しん
麻しん(はしか)は、麻しんウイルスの空気感染・飛沫(せきやくしゃみのシブキ)感染・接触感染によって発症します。ウイルスに感染後、無症状の時期(潜伏期間)が約10~12日続きます。その後症状が出始めます。主な症状は、発熱、せき、鼻汁、目やに、赤い発疹です。症状が出始めてから3~4日は38度前後の熱とせきと鼻汁、目やにが続き、一時熱が下がりかけたかと思うと、また39~40度の高熱となり、首すじや顔などから赤い発疹が出始め、その後発疹は全身に広がります。高熱は3~4日で解熱し、次第に発疹も消失しますが、しばらく色素沈着が残ります。合併症を引き起こすことが30%程度あり、主な合併症には、気管支炎、肺炎、中耳炎、脳炎などがあります。発生する割合は麻しん患者100人中、中耳炎は約7~9人、肺炎は約1~6人です。脳炎は患者1,000人に1人の割合で発生がみられます。また、麻しんにかかると数年から10数年経過した後に亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という重い脳炎を発症することがあります。これは、麻しんにかかった人のうち、約10万人に1~2人の割合でみられます。麻しんにかかった人のうち、数千人に1人程度の割合で死亡することがあります。
(2)風しん
風しんは、風しんウイルスの飛沫感染によって発症します。ウイルスに感染後、無症状の時期(潜伏期間)が約14 ~ 21日続きます。その後症状が出始めますが、主な症状は、麻しんより淡い色の赤い発疹、発熱、首のうしろのリンパ節の腫れなどです。また、その他に、せき、鼻汁、目が赤くなる(眼球結膜の充血)などの症状がみられることもあります。子どもの場合、発疹も熱も3 日程度で治ることが多いので「三日ばしか」と呼ばれることがあります。合併症として、まれに脳炎、血小板減少性紫斑病などが、2,000人~5,000人に1人くらいの割合で発生することがあります。また、大人がかかると、発熱や発疹の期間が子どもに比べて長く、関節痛がひどいことが多いとされています。妊婦が妊娠20週頃(主に初期)までに風しんにかかると、先天性風しん症候群と呼ばれる病気により、心臓病、白内障、聴力障害などの障害をもった赤ちゃんが生まれる可能性があります。
予防接種を受けた子どものうち、95%以上が免疫を獲得することができます。体内に免疫ができると、麻しんや風しんにかかることを防ぐことができます。ただし、予防接種により、軽い副反応がみられることがあります。また、極めてまれですが、重い副反応が起こることがあります。予防接種後にみられる反応としては、次のとおりです。
(1) 麻しん・風しん混合ワクチン
麻しん風しん混合ワクチンの主な副反応は、発熱(10~20%程度)や、発疹(10%程度)です。これらの症状は、接種後5~14日の間に多くみられます。接種直後から翌日に過敏症状と考えられる発熱、発疹、かゆみなどがみられることがありますが、これらの症状は通常1~3日で治まります。時に、接種部位の発赤(赤み)、腫脹(はれ)、硬結(しこり)、リンパ節の腫れ等がみられることがありますが、いずれも一過性で、通常数日中に消失します。まれに生じる重い副反応としては、アナフィラキシー様症状(ショック症状、じんましん、呼吸困難など)、急性血小板減少性紫斑病(紫斑、鼻出血、口腔粘膜の出血等)、脳炎及びけいれん等が報告されています。
(2) 麻しんワクチン(麻しんの予防接種のみを実施するときに使用)
麻しんワクチンの主な副反応は、接種後5 ~ 14 日を中心として、37.5度以上38.5度未満の発熱(15~35%)、38.5度以上の発熱(10%以下)、麻しん様の発疹(10~20%)がみられます。ただし、発熱の期間は通常1 ~ 2 日で、発疹は少数の紅斑や丘疹から自然麻しんに近い場合もあります。その他に接種した部位の発赤、腫れ、熱性けいれん(約300 人に1 人)、じんましん等が認められることがありますが、いずれもそのほとんどは一過性です。まれに生じる重い副反応として、アナフィラキシー様症状、脳炎脳症(100万人接種あたり1人以下)、急性血小板減少性紫斑病(100万人接種あたり1人程度)が現れることがあります。ワクチン接種後に起こる亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は極めてまれであり、自然の麻しんウイルスに感染し、発症した場合の1/10以下程度と報告されています。
(3) 風しんワクチン(風しんの予防接種のみを実施するときに使用)
風しんワクチンの主な副反応は、発疹、じんましん、紅斑、かゆみ、発熱、リンパ節の腫れ、関節痛などが現れることがあります。まれに生じる重い副反応としては、ショック、アナフィラキシー様症状があり、また、急性血小板減少性紫斑病(100万人接種あたり1人程度)が報告されています。
水痘は「水ぼうそう」とも呼ばれ、水痘・帯状疱疹(すいとう・たいじょうほうしん)ウイルスの接触感染・飛沫(せきやくしゃみのシブキ)感染・空気感染によって感染します。ウイルスに感染後、無症状の時期(潜伏期間)は約13日~ 17日間続きます。その後症状が出始めます。最初は赤い発疹で始まり、その後水疱になり、かさぶたになります。発疹は痒みを伴います。数日間新しい発疹が出るため、同時に様々な段階の発疹(赤い発疹、水疱、かさぶた)が出ているのが特徴です。軽度の発熱を伴うこともあります。通常は、1 週間程度で多くの発疹がかさぶたになり、治ります。合併症としては、痒みのため皮膚をひっかくことによる皮膚の細菌感染症や、まれに肺炎、気管支炎、肝炎、心膜炎、髄膜脳炎、血小板減少性紫斑病などがあります。特に免疫機能が低下している方がかかると、重症化しやすく命に関わることもあります。小児より、成人してから水痘にかかったほうが重症となりやすく、また、妊娠20週までの妊婦が水痘にかかった場合、先天性水痘症候群(四肢低形成、脳皮質の委縮、脈絡網膜炎、小頭症など)の赤ちゃんが生まれる可能性があります。
水痘は、数年前まで小児を中心に毎年100万人程度の患者発生があり、4,000人程度が重症化あるいは合併症により入院し、20人程度が死亡していると推定されていました。なお、水痘が治った後も、ウイルスは知覚神経細胞に休眠状態で潜んでいます。高齢の方や過労、ストレスなどで免疫が弱まるとウイルスが活性化して、帯状疱疹を起こすことがあります。
水痘ワクチンは水痘・帯状疱疹ウイルスを弱毒化してつくった生ワクチンです。このワクチンを接種すると、80%から90%の方が免疫を獲得することができます。接種を受けた方のうち、約20%は、後に水痘にかかることがありますが、かかっても軽くすむとされています。水痘患者に接触した場合、3日以内にワクチンを接種すれば発症を予防できるとされ、院内感染の防止にも使用されています。ただし、予防接種により、軽い副反応がみられることがあります。また、極めてまれですが、重い副反応が起こることがあります。予防接種後にみられる反応としては、下記のとおりです。
【水痘ワクチンの主な副反応】
主な副反応は、軽微な発熱・発疹および局所の発赤(赤み)・腫脹(はれ)です(約7%に認められています)。その他、まれに接種直後から翌日にかけて、過敏反応(発疹、じんましん、紅斑、かゆみ、発熱等)が現れることがあります。まれに生じる重い副反応としては、アナフィラキシー様症状(ショック症状、じんましん、呼吸困難など)、急性血小板減少性紫斑病(紫斑、鼻出血、口腔粘膜の出血等)があります(100万人接種当たり1人程度)。
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスの感染によって起こる中枢神経(脳や脊髄など)の疾患です。ブタなどの動物の体内でウイルスが増殖した後、その動物を刺したコガタアカイエカ(水田等に発生する蚊の一種)が人を刺すことによって感染します。そのため患者から周囲の人への感染はありません。感染しても症状が現れない(不顕性感染)場合がほとんどです(過去には、感染者のうち0.1% 〜1% が発病すると報告されています)。症状が出る場合には、6 ~ 16 日間の潜伏期間の後に、数日間の高熱、頭痛、嘔吐などで発病し、これらに引き続き急激に、意識障害(意識がなくなること)、けいれん等の中枢神経系障害(脳の障害)を生じます。脳炎を発症した場合20 ~ 40%が死に至るといわれています。日本脳炎は日本以外にも、東アジアから東南アジア、南アジアなどの地域で広く発生しています。国内での発生状況は、予防接種により著しく患者が減り、平成4 年以降の報告患者は毎年ほぼ10 名以下となっています。そのうち大部分は、九州・沖縄地方及び中国・四国地方で発生しており、北海道、東北地方においては発生していません。関東、甲信越地方においては、まれですが発生が確認されております。
日本脳炎の予防接種は、第1期の初回接種2回と概ね1年後の追加接種1回の計3回の接種をもって基礎免疫の完了と考えます。さらに第2期として1回接種し、計4回接種します。どのような予防接種でも、軽い副反応がみられることがあり、また、極めてまれですが、重い副反応が起こることがあります。日本脳炎の予防接種後にみられる副反応は、次のとおりです。
【日本脳炎ワクチンの主な副反応】
●局所の反応 |
:紅斑、疼痛、腫脹、かゆみなど |
●全身の反応 |
:発疹、発熱、じんましん、紅斑、頭痛、咳嗽、鼻水、咽喉頭痛、 咽頭発赤、嘔吐、下痢、食欲不振、腹痛など |
まれに生じる重い副反応として、ショック、アナフィラキシー様症状(血管浮腫、全身にひどいじんましん、呼吸困難など)、急性散在性脳脊髄炎、血小板減少性紫斑病、脳炎・脳症、けいれんなどを起こしたとの報告があります。
【女性への注意事項】
妊娠中の接種に関する安全性が確立していないため、妊娠している方又はその可能性がある方は、原則接種できませんが、予防接種の必要性及び効果が母体への影響、並び危険性を上回ると接種医が判断した場合にのみ接種することができます。接種の際は、接種を受ける医師にご相談の上、適当な時期に接種してください。
日本脳炎の定期予防接種については、マウス脳由来の日本脳炎ワクチン接種後に急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を発症した事例が報告されたことから、平成17 年5 月以降、厚生労働省から積極的な接種勧奨を差し控えることとされていました。その後、平成21 年2 月に新たに乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンが開発され、厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会の下に設置された、日本脳炎に関する小委員会において専門家が検討した結果を踏まえ、平成22年4 月に積極的勧奨が再開しました。また、特例措置として、平成7年4月2日〜平成19 年4月1日生まれの方は20 歳未満の間に必要な接種が可能となりました。特例措置対象の方については、国において毎年、年齢を定めて、順次積極的な勧奨を行っています。
ヒトパピローマウイルス(HPV)についてはこちらをご参照ください。
詳しくは、下記区役所保健センターへお問合せください。
保健衛生局/保健所/感染症対策課 予防接種推進係
電話番号:048-840-2211 ファックス:048-840-2230