~肉やレバーは充分加熱して食べましょう~
腸管出血性大腸菌とは:変り種の腸内細菌です
大腸菌は、ヒトをはじめとした生き物の腸内に存在する細菌のグループ名です。ヒトの腸内に通常存在する大腸菌は、一部のビタミンを作るなど、消化・吸収に役立っています。しかし、なかには下痢などの症状を引き起こす種類があり、病原性大腸菌と呼ばれます。
- 病原性大腸菌の中でも、ベロ毒素という強い毒素を作り、血性の下痢を引き起こす種類を腸管出血性大腸菌と呼びます。
- 腸管出血性大腸菌の代表格はO157(オーいちごうなな)ですが、O26やO111など、他にもいくつかの型があります。
- 牛などの反芻(はんすう)動物は、健康でも一定の割合で腸管に保菌しています。
- 全く症状のない人(健康保菌者、無症状病原体保有者)の検便で見つかることもあります。
感染経路:口から。でも食べ物からだけではありません。
O157が世界的に広く知られるようになったのは、中心部まで充分加熱されなかったハンバーグを原因食品とした集団食中毒事件(アメリカ合衆国)でした。
感染経路として、以下のような例があります。
- 食品や水による経口感染
腸管出血性大腸菌に汚染された生や生焼けの肉やレバー、乳製品や野菜、漬物、井戸水などからの感染
- 調理器具を介した感染
焼肉、バーベキューなどで生肉を扱うハシ(トング)と、焼いた肉を取り分けたり食べたりするハシを区別せずに使用し感染
生肉を扱ったまな板や包丁を使い分けをせずに、または充分な洗浄・消毒をせずに野菜を切り、その野菜を生で食べて感染
- 人から人への二次感染
患者や保菌者の便には、大量の菌が含まれており、オムツ交換の後に世話をした人の手洗いが充分に行われなかったり、乳幼児などでトイレの後に充分な手洗いを行えず、菌が付着した手を介して、ドアノブやおもちゃなどが汚染され、そこに触れた手で食事をし経口感染
トイレやお風呂を介して感染
- 動物から人への接触感染
牧場や動物園などで動物に触れ、充分手を洗わなかったために感染
腸管出血性大腸菌感染症の特徴
腸管出血性大腸菌感染症は、一般の食中毒と似ている半面、異なる特徴がいくつかあります。
・他の食中毒菌に比べ、感染力が強く、少ない菌数(50個程度)でも感染するといわれています。
・患者さんや健康保菌者の便などから周囲のヒトに広がる点は、他の食中毒にはない特徴です。
また、当然ながら気温の上昇とともに患者の発生も増加します。
症状:はじめは下痢症状から
感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は2~9日(多くは2~5日間)です。
腸管出血性大腸菌感染症は、無症状から生命に危険が及ぶものまで、症状の程度に幅があります。
- 健康上問題となる症状は、腹痛と水様性の下痢からはじまります。また、吐き気や発熱を伴うこともあります。
- 腸管出血性大腸菌感染症の下痢症状では、血性の下痢(血便)が見られるのが特徴です。これは、ベロ毒素により腸の粘膜が傷つけられるために起こります。
- 発症した方のうち6~7%程度は、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症など重症の合併症に進行すると言われており、適切な治療を行わないと生命に関わることもあります。
- 特に子供や高齢者など免疫力の弱い方は、重症化しやすいので注意が必要です。血便や激しい腹痛がある場合には、医療機関を受診してください。
市内の発生状況
平成2年に市内(旧浦和市)の幼稚園で井戸水を原因とした300人以上の大規模な集団感染があり、国内でこの感染症が注目されるようになりました。
腸管出血性大腸菌感染症(ベロ毒素産生)は感染症法で、診断した医師が必ず届出をしなければならない感染症に定められています。
市内の届出状況については、「O(オー)157など腸管出血性大腸菌感染症に注意しましょう」のページをご覧ください。
予防方法
(1)手洗い
(2)食品の取り扱い
- 調理器具を介した感染を避けるため、食材ごとに器具を変えるか、洗う。
- 生肉を扱った調理器具は他の食材に触れないようにし、洗浄・消毒後よく乾燥させましょう。
- 焼く前と焼いた後の肉を扱うハシ・トングを分ける。
- 腸管出血性大腸菌は熱には弱く、75度で1分以上加熱すれば死滅すると言われています。
- 肉やレバーは、中心部まで充分加熱し、生焼けでは食べないようにしましょう。
- 調理後は、できるだけ早く食べましょう。
- 生のままで食べる食材(野菜、果物など)はよく洗いましょう。
(参考)塩素系消毒液の使い方
注意!!
市内で、大人と子どもが同じ食材を食べても、子どもだけが発症または保菌していた事例が過去にありました。
お子さんが肉を焼く際は、充分に火が通っているか、ハシ等の使い分けができているかを、大人が確認してください。
特に子供や高齢者など免疫力の弱い方は重症化しやすいので、ユッケなど肉の生食はやめましょう。
※「新鮮な肉=安全」ではありません!
牛などの動物は、健康でも一定の割合で保菌しています。
たとえ新鮮な肉であっても、安全とは言えません。
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