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更新日付:2024年7月1日 / ページ番号:C074391

国指定史跡真福寺貝塚 調査最前線 2023

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発掘調査は今

発掘調査の最新の様子をご紹介します。

令和 5 年度の発掘調査

令和5年度の発掘調査は、昨年度に調査した2カ所の調査区のうち、南側調査区のさらに西側、谷を下った部分で実施していきます。
いよいよ本格的に泥炭層遺跡の発掘が始まり、さらなる調査成果が期待されます。本調査は、考古学をはじめとする各分野の専門家からのご協力を仰ぎ、令和5年度と令和6年度の2ヵ年計画で推進していきます。

↓ ↓ ↓ ↓ 直近の真福寺貝塚の様子です!随時更新予定

  • 3月29日(金曜日) 雨のち晴れ

本日は今年度最後の調査です。まずは、現状の進捗状況をご報告します。

下の写真をご覧ください。
斜面下方は、多くの木材が出土しています(下写真(左))。この面は、主に晩期初頭安行3a式(約2,900年前)の土器が出土しており(下写真(右))、現在出ている調査面の中で、最も古い面です。

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古い土器が出土しているということは、現状で最も調査が進んでいるということですね。

次の写真は、調査区東側、斜面部分の土器出土状況です。
この部分は、晩期中葉安行3c式土器(約2,700年前)を主体とする層が続き、現在最も新しい面です。

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安行3c式の分厚い堆積層が、なかなか掘り抜けません。

斜面下方の、木材が集中する部分の手前では、比較的大きな土器片がたくさん集積しています(下写真)。

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谷底に向かって、多量の土器が集積しています。

また、漆の塗膜片が出土しました(下写真)。大きさが2cm程度の、ごく小さなカケラです。

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近くに漆製品が眠っているのかも…。細心の注意を払います。

調査区の両端に設定しているサブトレンチ(南北両端の細い溝)からは、晩期中葉・晩期初頭・後期前~中葉の遺物が雑多に出土する地点のほか、後期前~中葉の遺物を主体とする地点があります。

この部分は、現在の調査面より20~30センチメートル程度、先行して深掘りしています。
今の面よりあと数10センチメートルほど掘り下げていけば、晩期初頭や後期前~中葉を主体とする層に到達します。

なお、下層は植物繊維が少ない、黒色の粘質土に移り変わっています。

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左:晩期中葉・晩期初頭・後期前~中葉の土器、右:後期前~中葉の土器(いずれもサブトレンチ出土)

今年度の調査は、ひとまず下層の堆積状況を確認し、来年度の調査の見通しを立てて終了しました。
改めて令和6年度の目標を定めて、計画的に進めて参ります!

次に、今年度の調査で確認した事実をまとめてご報告します。

  1. 古代から中世を堆積時期の最新段階とする草本泥炭層の下に、縄文時代の地層である木本泥炭層が堆積していること。
  2. 加工の痕跡を残す木材を含む木本泥炭層が、斜面下方を中心に堆積していること。
  3. 本調査区における旧来の地形が、東から西にかけて大きく落ち込んでいること。
  4. 斜面に沿って、縄文時代晩期中葉安行3c式土器を主体とする層が、厚く堆積していること。

注目すべきは、地形に即して遺物や木材が堆積、集積していることです。
この事実は、真福寺貝塚における泥炭層遺跡が、どのような経緯や過程を経て形成されたのかを知るうえで、とても重要な手がかりとなります。

以上、真福寺貝塚泥炭層遺跡の状況が、少しずつ明らかになってきました。

しかし、泥炭層遺跡のメインは、もっと下に眠っていることが見込まれます。今年度の調査は、まだまだ序章に過ぎません。
来年度も引き続き泥炭層と、そのさらに下の層を詳しく調べていきます!

  • 2月22日(木曜日) 晴れ

現在は、調査区東側の斜面部と、その西側の大型材周辺の調査を進めています。

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大型材周辺の様子。一見、小さい材の出土は落ち着いたように見えますが…。

斜面部では、変わらず晩期中葉安行3c式期(約2,700年前)の堆積層が続いています。

その中で白色の粘土が、直径80センチメートル程度の大きさで、楕円状に広がっている様子を確認しました(下写真)。
この粘土は、ブロック状の塊が集中して堆積している状態で、泥炭層の中でまだらに広がっています。
この粘土の性格を調べるため、楕円形の粘土集中部分を半分にたち割って、堆積状況を確認しながら掘り進めます。

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水に溶けつつあるようです。この白色粘土の正体は何なのでしょうか。

また、その周辺からは、ニホンジカの骨や赤彩土器などが出土しました(下写真)。

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骨の部位は、おそらく下アゴです。土器片は深鉢の胴部でしょうか。

大型材周辺では、冒頭の写真手前に見えている、二股に分岐した大きな材を取り上げました。

するとその直下から、長さ1メートル前後のまっすぐな材が、向きをそろえて5本まとまって出土しました(下写真(左))。
これらの材は、下の大きな材に沿うように集積しています。
なお、この周辺からは、晩期初頭安行3a式土器(約2,900年前)が出土しています。

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左写真は出土状況、右写真は取り上げ後の状況です。

これらの材を取り上げ、洗って加工の有無を調べたところ、いくつかに分割して利用された加工材の、残材ではないかと考えられます。
これらは、上の材と下の材の間に充填されており、上の材を安定させるために、意図的に置かれたのではないかと推測しています。

  • 2月2日(金曜日) 晴れ

引き続き、調査区東側斜面部の調査を進めています。

おびただしい木材を取り上げてきましたが、今見えている層では木材が少なくなりました。

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左が1月23日時点の写真で、右が2月1日時点の写真です。木材の出土量が落ち着きました。

なお今週、今年度2点目となる木胎漆器の破片が出土しました。出土した場所は、上写真の右方、黄色の枠の中です。

下の出土状況の写真では、2点の破片が見えています。同じ個体の破片でしょう。
1点1点が4~5センチメートルほどの、ごく小さな破片ですが、この時点では大きな成果です!
今後の調査の進展にも、大いに期待が高まります。

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完形品は、どんな姿をしていたのでしょう?

そのほかにも、続々と出土しています!

下の写真は、何かに漆を塗る際に、パレットとして使われた土器の破片と、昆虫の羽です。
パレットの土器片は、内面だけに漆が付着しています。
昆虫の種類は、現時点ではわかりません。今後、専門家に同定していただき、何の昆虫なのか特定していきます。

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調査深度が下がるたび、遺物の種類や様相に幅が出てきました。もっと下げていきます!

  • 1月22日(月) 晴れ

現在、調査範囲を拡張した斜面上方の掘削が進み、晩期中葉安行3c式期(約2,700年前)の様相が明らかになっています(下写真)。

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斜面上方の台地側では、10cm以上の大型の土器片が出土するようになりました(下写真)。
下写真(右)の中央付近で、輪っか状に朱く見えている部分が、12月9日の現地見学会にて、出土状況をお見せした漆塗土器です。

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画像をクリックorタップして、遺物の出土状況をご確認ください!

本日、この漆塗土器の取り上げ作業を、とうとう実施しました。

以前にも報告しましたが、器種は壺形です。
胴部~底部の大半を欠失しています。そのため、壺形のすぼまった口縁部付近が、天地逆で出土したときに、輪っか状に見えていたのです。

付近には、この土器のものとみられる破片が散らばっており、1点1点の出土位置を記録した後、すべて取り上げました(下写真)。
これらを接合していけば、胴部の中ほどまで復元することができそうです。完成がとても楽しみですね!

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復元後の実物は、来年度の最新出土品展で展示する予定です(夏頃予定)。

  • 12月15日(金曜日) 晴れ

引き続き、調査区東側の斜面上方を掘り進めています。
やはり、西側の斜面下方に比べて遺物が多いです。主に晩期中葉安行3c式土器(約2,700年前)が出土しています。

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小さな高まりの一つ一つが、出土した土器片です。出土位置を記録するため、すぐに取り上げず残しています。

調査区東側の掘削を進めたことで、谷部の泥炭層のキワ、つまり昔の湿地のキワを確認できました。下の写真(左)の中央付近に見える白線を境にして、向かって右側の斜面下方に泥炭層が堆積しています。
地形や層の変わり目に注意して掘ったところ、下の写真のような地形が掘り出されました。
こうして写真で見てみると、当時の地形が今よりもずっと急斜面であったことに、改めて気付かされます。

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右写真にご注目!鋼矢板の色の変わっているラインが、現在の地面があったラインです。写真手前から奥に向かって、大きく落ち込んでいることがわかります。

下に、今年度5月の調査開始前の写真と、現在の写真を並べてみました。
現在、谷部はほとんど埋没してしまい、緩やかな斜面として確認できるのみですが、昔は今よりずっと急な斜面が形成されていたのですね。

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5月31日時点の調査区(左)と、12月9日時点の調査区(右)。数千年を隔てた、地形の変化を実感できました。

  • 11月10日(金曜日) 晴れ

斜面下方にあたる調査区西側では、晩期初頭安行3a式(約2,900年前)の土器が出土するようになりました。下の写真右奥の、木材がほとんどみられない部分です。

その一方で、写真左方手前、調査区東側の木材が目立つ部分では、まだ晩期中葉安行3c式土器(約2,700年前)が出土しています。土層の堆積順序でいうと、東側に西側より新しい層が残っていることになるので、全体の調査面を揃える必要があり、この新しいほうの層の調査が急がれます。

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まだまだ出てくる木材。さくさく取り上げて、調査深度を下げていきたいところ…

また、この木材が多く出土する部分から、下の写真のような漆塗りの土器が出土しました!
出土状況の写真で散らばっている破片2点が、右の写真になります。朱は真っ黒な泥中で、よく映ますね。ちなみに、土器自体は壺形土器で、ひっくり返った状態で出土しました。

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朱の上からでも、縄文や沈線がしっかり見えます。

安行3c式の層は、さらに東側の未調査部分に続いているため、この部分の掘削を開始しました。
これまでの調査と同様に、先行して深掘りする溝状の細い調査抗を設けて、土層の堆積状況を確認しつつ、分層発掘を進めていきます。

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さらに調査範囲を広げています(写真左方手前)。この部分は、表土除去の時点ですでに縄文時代の層が露出していました。ひとまず安行3c式の層まで下げて、足並みを揃えます。

  • 10月20日(金曜日) 晴れ

晩期中葉安行3c式期(約2,700年前)の木材の取り上げ作業を実施しています。

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10月16日時点の調査状況。写真中央の奥側に、遺構かもしれない木材の集積が。

前回、木材が直角に組まれているような、遺構の可能性がある木材のまとまりについて報告しました(下写真(左))。

これらを取り上げ、加工の有無を確認したところ、下写真(左)の横方向に置かれた材は、板目材を割り出した際の残材(分割材)であることがわかりました(下写真(中))。
しかし、とうとう材同士が組み合わされた痕跡は見つからず、想定していた木組遺構とは言い難いものでした。
また、それらのすぐ近くで出土した、表面が平滑な材については、さらに周囲を掘り下げてみたら、斜面上方(東側)へ根っこが続いており、自然木であることは明らかです(下写真(右))。

よって、残念ながら今年度初の遺構発見には至りませんでした…。

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人々の活動の痕跡を示す資料ではありましたが…

遺物は安行3c式を主体として、斜面上方を中心に出土しています。中には10cmを超える、大きめの土器片も出土しました(下写真)。

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口縁部の大きな破片。まだまだ小さな破片が多いので、大きな破片はうれしくなります。

そして、ついに今年度初の木胎漆器が出土しました!!
木胎漆器とは、木材から削り出してつくった器に、漆を塗布した製品です。

下の写真をご覧ください。
もともとは全面的に漆塗が施されていたのでしょう。今は外面の漆塗はほとんど残っていませんが、内面には鮮やかな漆の被膜が残されています。

調査が進めば、このような漆塗製品がもっとたくさん出土するはずです。
今後の調査の進展に、目が離せません!

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左から、外面・断面・内面。鮮明な朱の色彩が、3,000年近く経過した現在でも、良好に保たれています。

この遺物は、12月9日に開催予定の現地見学会にて実見可能です!ぜひ会場までお越しください。

【史跡真福寺貝塚現地見学会】
12月9日(土曜日) 開催場所:真福寺貝塚
午前の部:10時~11時30分/午後の部:13時30分~15時
※予約不要、参加費無料

  • 10月4日(水曜日) 晴れ

引き続き、安行3c式期(約2,700年前)の泥炭層の調査を進めています。

今は木材の検出と、その出土状況の記録をとっているところです(下写真)。
中には、加工された木材があるかもしれません。注意して検出作業を進めます。

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本調査の記録作業では、フォトグラメトリを用いた三次元測量に加えて、アナログ媒体としていまだ平板測量も併用しています。フォトグラメトリの実用化が軌道に乗ったら、記録作業はすべてデジタルに移行していきたいところ…

そんな中、気になるものを発見しました。下の写真をご覧ください。
向かって左手(東側) では、いくつかの材が直交するように組み合わさっており、右手(西側) では、表面がやや平坦な材が、斜面に沿って東西方向に続いています。

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とうとう今年度の調査初の遺構の発見になるか?

東側については、縄文時代の低湿地遺跡でよくみられる、木組遺構と呼ばれる遺構である可能性があります。

木組遺構とは、一般に付近からトチノミや殻がまとまって出土することが多く、アクの強いトチノミをはじめとする堅果類を、食用に加工する施設ではないかと考えられています。
また、河道に沿って造設されることから、別名「水場遺構」「水さらし場遺構」ともいい、トチノミのアク抜きに大量の清流が使用されることがあることにも矛盾しません。
そのため、一般的にはトチノミの加工場であるという見方が強いのです。

西側の木材は、木組遺構へと渡された木道の可能性が考えられます。
よく見ると、他の材より太めで表面が摩耗しています(下写真(右))。もし人工物であるとすれば、出土位置から木組遺構の関連施設といってもよいでしょう。

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上写真の拡大写真。左が東側の木材集積、右が西側の木材。

しかしながら、これらを構造物として断定するための痕跡(例えば、材を固定するための杭や、材同士を緊縛した縄や跡)は見つかっておらず、周囲には自然木も多く出土しています。これらが上記のような遺構であると、確信をもって言い切ることはまだできません。
調査を進めながら、慎重に検討していきます。

ちなみに、これまでトチノミやクルミが出土していることはすでに報告した通りですが、このたび初めてクヌギ?の実(ドングリ)が出土しました(下写真)。

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こうした極小サイズの遺物は、ついつい見落としがちです。目を皿にして発見に努めます!

  • 9月15日(金曜日) 晴れのち雨

とうとう草本泥炭層が終わり、縄文時代の地層である、木本の泥炭層に到達しました。

木材は斜面上方に集中し、斜面下方になると少なくなることが明らかです(下写真(左))。谷底の方よりも水辺に集積しやすいのでしょう。
下の写真左の、ちょうど中央付近で見えている大型材は、よく精査してみたところ(下写真(中央))、根っこまでつながっている自然木のようでした。

木本泥炭層では草本泥炭層に比べて、遺物がやや多く出土しています。とはいえ、まだまだ掘り始めたばかりではありますが、グリッド(注)1マス(1平方メートル)中に全く無いか数点程度の出土量です(下写真(右))。

(注)調査区内の位置を指示するための区割り。本調査では、1m×1mの格子を設定。

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土器をはじめとする遺物も、やはり斜面の上の方に集中しています。

出土した土器は、晩期中葉安行3c式(約2,700年前)が主体です(下写真(左・中))。
ただし、下層の堆積状況を確認するため、先行して深掘りしている部分では、安行3c式より2段階古い、安行3a式土器(晩期初頭、約2,900年前)が出土しています(下写真(右))。
どうやら木本泥炭層は、安行3a式期→安行3c式期の順番で、秩序正しく堆積している、ということがわかりました。

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いよいよ本格的な縄文時時代の土層を調査していきます!

  • 8月31日(木曜日) 晴れ

以前から行っていた、木材の取り上げ作業が完了しました。18リットルの平箱10箱以上、大きめの水槽1個分の木材を取り上げました(下写真(左))。

同時並行で、調査区南側の土層堆積を確認するため、畔のように残していた部分を掘り下げ始めました。
その際、3m間隔で柱状に掘り残し、土壌サンプルを採取しています(下写真(右))。土壌サンプルは、15cm四方で土層ごとに切り取って、採取した地点と層位をメモしながら取り上げました。

採取した土壌サンプルは、自然科学分析を行う予定です。
その土壌に含まれる炭素(放射性同位体)から年代測定をしたり 、土壌に残っている花粉や植物遺体を調べて、当時の植生を分析したりします。

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遺跡の成り立ちや古環境を知るために、非常に重要な情報です。 土層堆積を維持したまま、慎重に取り上げます。

また、斜面上方をさらに掘り下げたところ、泥炭層の最上層から、古墳時代後期から奈良時代頃の土師器(坏)が出土しました(下写真)。残念ながら割れてしまっていますが、破片を接合すればほぼ完全なかたちで復元できそうです。
一番新しい段階の泥炭層の年代について、考古学的な手がかりになるでしょう。

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まだまだ遺物が少ない層なので、この土師器をどのように評価するか、慎重な検討を要するところです。しかし、仮にこの遺物が使われた時期と土層の堆積時期が、それほど前後しないとするならば、泥炭層最上層はどんなに古く見積もっても、古代をさかのぼることはないと考えられます。

  • 8月25日(金曜日) 晴れ

お盆明け、先日の台風の影響で、なんと調査区の覆い屋が破損してしまいました!

これを機に、覆い屋の脚を立てるため掘削できなかった部分を除去し、調査区内をきれいにしました。
下のビフォーアフターをご覧ください。土の塊がなくなって、調査の障害がなくなりました。

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ちなみに脚は調査区の外に組みなおして、覆い屋を復活させました。

現在調査している層は、お盆前に調査していた層の直下にあたる層です。この層も植物繊維を含む草本泥炭層ですが、上層よりも大型の木材が出土するようになりました(下写真(左))。

木材は出土位置を記録したのち、1点1点取り上げていきます。
非常にもろく、手に取ると割れてしまうので、取り上げ直後すぐに水で洗い、パズルのように組み立てて原形に戻し、大きさを測りました(下写真(中・右))。
いずれも加工の痕跡は見当たらず、自然木であると考えられます。

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調査区内の様相が変わって参りました。

  • 8月10日(木曜日) 晴れ

調査区の谷側では、表土直下から深度100cm以上になりました(下写真(左))。

これ以上の深さになると、壁面の崩落が懸念されるので、安全性を考慮して、段差を付けつつ掘削を進めます(下写真(右))。
発掘調査の原則では、土層の堆積状況を記録するため、壁を垂直に落とすことが重要ですが、安全にはかえられません。

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屋根の足を立てている面が、6月の調査開始時点の高さです。2か月ほどでだいぶ掘り下がりました。

下の3枚の写真をご覧ください。
現在調査している層では、直径5~8cmほどの太さをもつ木材が出土するようになりました。中には直径20cmほどの太い木材も見つかっています。
いずれも加工の痕跡は確認できないので、自然の木であると考えられます。

この層にも植物繊維がよく含まれており、草本主体の泥炭層であるという点については、これまで掘り上げてきた層と同じです。
ただし、この層から大型の木材を伴うようになり、下層は木本主体の泥炭層へ移り変わっていくと考えられます。

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厳密には遺物ではありませんが、1点1点の位置情報の記録をとりつつ取り上げる予定です。

  • 7月21日(金曜日) 曇り

7月13日、追加した調査区南側トレンチを、東側(台地側)へ2m伸ばしました(下写真(左))。

斜面上方では、表土直下から10~20cmほどで縄文時代の遺物包含層が露出しました。この土層は西側(谷側)に向かって落ち込んでおり、その上に草本泥炭層が堆積している状況です(下写真(右))。 土器の小破片のほか、焼けた動物骨が多く出土しています。

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左写真の、手前の浅い部分が拡張部分です。右写真が拡張部分の断面で、向かって右側へ、縄文時代の遺物包含層が傾斜しています。

調査区南側半分は、先行して深掘りしているトレンチ部分を除き、表土直下から50~60cmほど全体的に掘り下がりました(下写真(左))。

現在は、植物繊維を多く含む黒色土層(草本泥炭層)を調査しています。
7月7日時点で、排水ポンプを設置していた面と同じ層です(下写真(中))。この層を掘り抜くには、まだまだ時間がかかりそうな見通しです。

この層は遺物が非常に少ないのですが、内外面に煤や炭化物が付着した土器片や、トチノミが出土しています(下写真(右))。
このような土器片は、年代測定や脂質分析をおこなうことができる可能性があります。非常に重要な資料です。

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遺物は少ないですが、着実に成果は上がっています。今後の報告にも乞うご期待!

  • 7月7日(金曜日) 晴れ

調査を開始して、早1か月が経とうとしています。

調査区内は地下から湧き出る水で常に水浸しです。先行して深掘りしている調査区中央のトレンチ(調査坑)からは、とめどなく水があふれています。
この地下水を少しでも逃がすことと、土層堆積を確認することを目的に、流路の下流にあたる調査区南寄りに、もう1本トレンチを入れることにしました。
下の写真は7月4日当時の状況です。向かって左の深掘り部分が、新しく入れたトレンチになります。

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そういえば調査開始当初から、ブルーシートで日よけ・雨よけの覆い屋を設けています。これで真夏の直射日光はある程度遮断できますね。酷暑はどうにもなりませんが…。こまめに水分補給と小休憩をはさんで、なんとか夏の暑さをのり切ります!
また、足元の状態がきわめて悪いので、足場板を渡して通路を確保しています。掘削のためにかなりの土量が排出されており(写真中央手前の山)、それらをすべて人力で運び出す必要があるのです。安全第一ゼッタイ!

本日までに、調査区中央のトレンチから南側トレンチにかけての範囲を、深さ30~50cmほど面的に掘り下げました。

下の写真(左)の土層断面をご覧ください。土層ごとの境界に線を引いて、その堆積状況を確認しています。
精査してみると、泥炭層はまだ少し下のほうにありました。

一番上に堆積している比較的明るい色の層は、近世の磁器を含む表土層です。その下には黒っぽい褐色土層があり、続いて真っ黒な黒色土層が堆積しています。

この黒色土層は全体的に繊維質で、土をほぐしてみると多量の繊維が入り込んでおり、表面は毛羽立っています。この繊維は植物由来のもので、だいぶ分解・土壌化が進んでいますが、そのさらに下の層は植物のかたちをはっきりと残した状態で、土と混ざり合って堆積しています(下写真(右))。
この層が出ている面は、排水ポンプを設置するために深掘りしたほんの一部分のみです。当分はこの面の検出を目指して、調査を進めていきます。

現在の調査面にあたる黒色土層を草本泥炭層といい、層位的には泥炭層の最新段階にあたります。
年代はせいぜい中世程度までしか遡れませんが、とうとう泥炭層に到達することができました。

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泥炭層とご対面。ただ、縄文時代の層はこれよりもっと下になります。先は長いです。
右の写真では、植物の葉っぱがあることが見てとれます。この植物が何かはまだはっきりわかりませんが、おそらく水生植物の一種なのでしょう。付近が湿地であったという、何よりの証左になりますね。

今は黒色土層の上面まで掘り進めています。
出土する土器は、表土から出てくるような摩耗した小さな破片が少なくなり、あまり摩滅のない大きめの破片もみられるようになりました。縄文時代晩期中葉の安行3c~3d式の土器を確認しています(下写真)。

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文様がしっかり残ってます。先日の表土剥ぎで出土したものより状態がいいですね。

  • 6月12日(月曜日) 曇り

本日より令和5年度の調査を開始しました!
台風の影響もあり、当初の予定より1週間ほどズレ込んでしまいましたが、遅れを取り戻せるよう調査メンバー総力をあげて取り組んで参ります。

まずは泥炭層を覆っている表土を、重機を使って除去していきます。

表土を1mほど下げたところ、一部で黒色の泥炭層が顔を出しました。
泥炭層の中には大型材が集中する地点があり、未加工のトチノミやクルミもみられます(写真左の右上)。
出土土器は、縄文時代後期の終わりから晩期の始めにかけての土器(約3,000~2,900年前)を主体としており(写真中)、中には古代(約1,000年前)の土師器の小片も混じっています。
出土した破片の多くは、小さく摩耗したものです。耕作による土壌の撹拌によるものでしょう。

大まかな表土の除去が完了した後は、調査区中央にトレンチを設定して(写真右)、下層の堆積を確認しながら分層発掘を進めていきます。

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初日から続々と遺物が出土しています。

今後も最新の成果を公開していきます!お楽しみに。

  • 6月2日(金曜日) 雨

前日に、発掘器材や遺物を管理・収納したり、現場での事務作業をおこなったりするためのプレハブを設置しており、本日そこへすべての器材や設備を搬入し、発掘調査の準備を完了させました。

この日は朝からひどい雨に見舞われており、地面はぬかるみ冠水してしまったところもあるほどです。
そんな中、業者の方々には無理を言って作業をお願いしてしまいましたが、おかげさまで調査開始に向けての準備が整いました。
本当にありがとうございました&お疲れさまでした!!

以下、作業風景をご覧ください。

【プレハブ設置】
今回は、3棟1組のプレハブを計4組12棟用意しました。
ここでは主に発掘器材や出土した遺物の管理・収納と、簡単な事務作業をおこないます。特に遺物管理棟は多めに設けており、出土するであろう貴重な有機質資料の保管に適した設備を用意する予定です。

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調査区正面の広いスペースに設置。現場の拠点が完成しました。

【器材搬入】
降りしきる雨の中、作業を決行。
発掘調査の準備は完了しましたが、浸水・冠水で地面が最悪のコンディションに。通常でも湧水との戦いである泥炭層遺跡の調査です。来週に予定していた表土剥ぎの作業は難しいかも…

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左:調査区を北東から臨む、右:調査区内

谷底に近い調査区西側は特に冠水がひどいです。
本来なら掘削を開始した時点で使い始める予定であった排水ポンプを使って、調査区内の水を排出していきます。

  • 5月31日(水曜日) 曇り

先日、伸び放題になっていた雑草の除去作業が完了しました!

見通しもよく快適な現場環境です。これで現場設備や発掘器材の搬入に取り掛かることができます。
作業してくださった業者の皆さま、ありがとうございました!!

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調査区外(左)と調査区内(右)。こざっぱりしました。

今日は、本格的な掘削が始まる前に、調査区内の高低差を記録しました。

今年度の調査区は、西に向かって全体的に下がっています。ここはちょうど旧地形の谷部にあたるところで、西に向かって下るほど水が染み出ています。谷底に近い部分では小さな池ができるほどです。掘削を進めると、とめどなく水があふれてくるでしょう。
そのため昨年度、調査区周囲に矢板を打ち込んで、掘削が入る範囲を厳重に養生しました。

レベルという測量器材を用いて、全体の高低差を測ったところ、調査区内の高いところから低いところにかけて、大体60cm前後の比高があることがわかりました。
ただし、縄文時代の地表はもっと深くなり、高低差もあったはずです。詳細は今年度の調査で明らかにしていきます!

  • 5月17日(水曜日) 晴れ

今日は、トレンチを入れる場所の設定と、 調査区内の測量・計測の基準とする地点の設定を行うべく、現地に赴きました。

新緑の季節を迎え、青々とした草本が遺跡全体を覆っています。
今年度発掘をおこなう予定の調査区とその付近は、すべて除草しなければなりません。

ここ2、3週間で一気に成長したのか、職員の膝丈ほどまで生い茂り、昨年11月に封鎖してからずっと手つかずになっていた調査区周辺は、高さ2mを超えるほど雑草が伸び放題になっていました。
6月の調査開始までに何とかしなければならないのですが……なかなか骨が折れそうです。

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遺跡西側地点の様子。ここ一帯を除草します。

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調査区正面(左)と調査区内(右)。職員の身長を優に超す高さ!

今日は5月中旬ながら気温28度の夏日。早々に作業を終えて帰庁しました。
6月の調査開始に向けて、引き続き準備を進めて参ります!

現地見学会

12月9日(土曜日) 晴れ

本日、真福寺貝塚現地見学会を開催いたしました!

普段は発掘調査中のため、関係者以外の立ち入りをご遠慮している当遺跡において、調査の最新情報を生で確認できる、年に1度の絶好の機会です。
冬の厳しい寒さを実感する今日この頃ですが、405名ものお客様にご来場いただきました。

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この日は気持ちの良い冬晴れ。天気に恵まれ、早朝から多くのお客様にお越しいただきました。

見学会は、午前の部(10:30~12:00)と午後の部(13:30~15:00)で開催しました。

今年度に土層断面の剥ぎ取り作業を実施した昨年度調査区と、現在調査を推進している泥炭層の調査区を、順番にご案内しました。職員の説明に熱心に耳を傾けていただき、史跡真福寺貝塚の意義深さや、重要性を知っていただきました。

また、遺跡の一画に設置したプレハブ内では、昨年度調査区と今年度調査区で出土した遺物を展示しました。遺物の用途や分類について、数多くの質問をいただきました。
中には研究の課題を突く鋭い質問も…。皆様と問題意識を共有できた、実に楽しいひとときでした。

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真福寺貝塚のあらましと、昨年度調査区についての説明。職員の話に聞き入ってます。

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今年度調査区の様子。現地表面と掘削最深部は3m以上の高低差があります。安全のため、調査区外(鋼矢板の外側)から見学していただきました。調査継続中の、臨場感にあふれるダイナミックな様子をご覧いただきました。

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展示スペースの様子。遺物を雨風から守るには最適な環境でしたが、見学には少々手狭でした。

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昨年度調査区出土遺物(左)と今年度調査区出土遺物(右)。先日報告した、木胎漆器や漆塗土器も展示しました。

今後、一般の方に広く活用していただく史跡として整備するにあたり、こうしたイベントは非常に重要な意味があります。市民目線で考える遺跡との関わり方、市民が求める史跡としての在り方について、職員が多くのことを学ぶ機会になりました。
これからも一般の方々との交流を通して、より良い史跡真福寺貝塚をつくり上げていきます!

ぜひとも一緒に真福寺貝塚を盛り上げていきましょう!!

来年度も現地見学会を実施する予定です。
日程が確定次第、市報やホームページでお知らせいたします。ぜひご確認ください。

来年度も真福寺貝塚でお会いしましょう!

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