

\ はたらく20代のリアルを追っかけ取材 /
さいたま市のいいじゃん!を教えてもらいました
宮 川 勁 志 さん(29)
生まれも育ちも、さいたま市。
大学進学をきっかけに都内で20代前半を過ごした後、地元に戻り飲食店に転職した宮川さん。オンオフの切替えのため徒歩通勤をしているそう。大学時代から好きなヒップホップグループRHYMESTER(ライムスター)宇多丸のラジオを聴きながら通勤することも。 平日休みが多いため友人と休みが合いにくく、オフの日はソロ活も多いとか。 好奇心旺盛な性格で、事前に予定を立てて行動するタイプ。 そんな宮川さんの趣味は映画鑑賞。嫌いなものは?と聞くと「冷めた牛肉」と即答。 あまりの早さにビックリしましたが、飲食店勤務だからこそ、 温かいうちに美味しく召し上がっていただきたい思いが滲み出たみたいですね。実はお酒が強くないそうで、ワインの試飲会では顔を赤らめながらソムリエの勉強をしているそうです。
そんな宮川さんに話を聞いてみました。
- 転職2年目
- ラジオが好き
- Podcasts
- 好奇心旺盛
- 美味しく召し上がれ
今も昔も、のんびり過ごせる公園が好き
地元を一度離れて戻ってきたからこそ感じる良さはありますか?
宮川:仕事が休みの日は美術館に行くこともあるのですが、高校生の頃は埼玉県立近代美術館の隣りにある北浦和公園によく行っていたことを思い出します。当時はお金もなかったので、何をするわけでもなく放課後に友達とのんびり過ごしていましたが、居心地が良かったですね。噴水があったり、緑が多かったり、今でも変わらない風景が好きです。
仕事が休みの日はどのように過ごしていますか?
宮川:平日の休みが多いので、わりと一人で過ごしています。映画が好きなので事前にチケットを買っておいて、その時間を軸に動く感じです。よく浦和で映画を見て、その後大宮公園や氷川参道を散歩しながら余韻に浸ったりしています。大宮公園は広いんですけど、休日は駐車場が埋まるぐらい人がいるので、たくさんの人に親しまれている感じがいいなと思います。
あとは、「ここはいいよ」と勧めてもらった飲食店に勉強にもなるので行くこともあります。なかなか一人だと行きづらい場所もあるので行けていない場所もたくさんありますけど、大宮周辺には行ってみたいお店が結構ありますね。
- 噴水は音楽も流れるよ
- 予定を立てて計画的に過ごす
- でも本当は何もしなかった休日の後悔を防ぐため
- 変わらない風景
- 映画のあとの散歩
お客様との一期一会に準備する毎日
今働いているお店は完全予約制・紹介制だとか?
宮川:そうです。旬の食材を使ったコース料理と、それに合わせた珍しいお酒を楽しめる隠れ家のようなお店です。中でも鹿児島県にある平松牧場から仕入れている厳選牛肉のメイン料理には自信があります。お客様は、静かに語り合いたい方や、特別な日にいらっしゃる方が多く、私もお客様との会話を大切にしています。カウンター席ではお客様からさまざまなことを教えていただくことも多く、私自身も日々成長を感じています。例えば、ワインについて詳しく教えていただいたり、新たな趣味を見つけるきっかけになったり。お仕事の話も伺う機会があり学びになっています。お客様がそれぞれいろんな話をしてくださるのが面白いですね。
お客様へのサービスで自分なりに心がけていることはありますか?
宮川:以前も飲食店で働いていましたが、正直に言うと僕は積極的なコミュニケーションが得意な方だとは思っていなかったので、今のようなカウンター中心のお店で働くことは自分の中では結構チャレンジでした。急に面白いことは言えないので、せめて料理やお酒の知識はしっかりと頭に入れておいて質問されたら踏み込んだところまで答えられるように準備しています。料理の素材の知識やお酒との相性などを調べたり試したりする作業をしていると気づけばあっという間に時間が経っています。お客様の会話や質問にもとことん付き合えるようなりたいですね。
実際にはいろいろなお客様が来られると思います
宮川:接待などで使ってくださる方や、積極的に話しかけてくださる方もいます。接待の場合は個室もありますので、意識的に主張を控えることもあります。また、どのお客様に対しても仕入れた知識をいきなりひけらかすようなことはしないように気をつけて、提供する料理やドリンクをきっかけにちょっとずつ話題を広げていくようにしています。そもそも長く説明していると料理が冷めてしまいますしね。
自分がお店にいくときもそうなのですが、決まった料理と決まった説明が出てくるだけのお店より、その時にたまたま入ってきた食材を紹介してくれたりするような一期一会の驚きがあると印象に残りますよね。そんなスタイルがいいなと思います。
素直な気持ちを楽しめるお店にしたい
働いているお店に対する気持ちや仕事へのこだわりを教えてください
宮川:ここで働くようになってからは、規模感もあってお店を「自分ごと」として考えられるようになりました。大手の飲食店のように分業化されているわけではないので、自分でお店を作っていかなきゃという気持ちになります。小さいことですけど、トイレ掃除をしていても全然嫌じゃない(笑)。自分の家に人が来るぐらいの気持ちでやっています。
今は美味しいものを食べるだけならけっこう簡単にできる時代だと思いますが、コース料理はわざわざ食べに来る価値があるものの一つだと思っています。食べて美味しいだけではなく、トータルで楽しんでもらえるようなお店でありたいです。僕は料理人ではないので、自分の存在意義を考える場面がよくあります。料理人はその人がいないとその味にならないので分かりやすいですよね。一方で「サービス」は向上心がなければ、本当にただ料理名を言うだけになってしまいます。じゃあ何ができるかという答えはまだないんですけど。
今、向き合っていることについてもう少し詳しく教えてください
宮川:今のお店を人気店にしていくことだけが人生の目標でもないですし、僕みたいなサービスの人間がどのようなキャリアを築いていけばよいのか考えることはあります。飲食業は、表現活動の一つだとも思っていて、そういう角度から面白さや奥深さを感じています。
あとは飲食の世界のいろいろな楽しみ方を伝えたい。飲食って、三ツ星レストランにイメージするような本格的なサービスの楽しみ方がありますよね?そういうものは世の中にとってすごく価値があると思いますが、一方で飲食という文化を突き詰めていった先にそれしかないのも面白くない。飲食店が価値を高めようとしたときに、どんどん偉そうになっていくのもちょっと嫌なんです。例えば、お肉の味の「深み」と言っても、分かるようで分からないことがあると思います。派手な言葉ばかり並べて「難しくてよく分からないけど何だかすごい」と思わせるようなことはしたくありません。もうちょっと素直な雰囲気で楽しめるようなお店にしていきたいですね。
まず人がいて、
場ができるさいたま市
さいたま市で働いてみて、どんな魅力を感じますか?
宮川:何よりも思うのはすごく居心地が良いということです。もちろん、自分が生まれ育った土地という安心感は大いにあると思うのですが、それだけではないとも思っています。変な言い方かもしれませんが、さいたま市にはたくさん「人」が住んでいます。もちろん、人の多さでいったら都内のほうが多いんですけど、まちに暮らしていて、そこで過ごしているという感じの人が多い。都心部で働いていたときはランドマークやお金に人が集まっている印象でしたが、さいたま市の場合は、まず人がいて、それぞれが場をつくったり面白いことをやろうとしている空気を感じます。順番で「人」が先にくるようなところがいいなと勝手に思っています。
あと、さいたま市は都内にもすぐ行くことができるし、都会でもあるけど自然もある。ただ、牧歌的な田舎でもない。人それぞれだとは思いますが、僕はさいたま市で生まれているので田舎すぎるよりも「人も結構いるね」ぐらいのほうが落ち着きます。人もいるし、高級店だけではないお店もいろいろあって、楽しむための材料が揃っているのはさいたま市の魅力かなと思います。
そこで暮らしながら楽しむための人も材料も揃っていると
宮川:そうですね。それがさいたま市のどことない温かみや生き生きとした印象、それが安心感につながっているのかもしれませんね。
うちは紹介制の店なので閉じたコミュニティだと思われるかもしれませんが、そんなつもりはなく、ゆっくりと地域に根を張ることでむしろ地元の方から愛されるような存在にしたいと考えています。
インタビューを終えて
お店で宮川さんのさりげない接客に心地よさを感じ、その心地よさがどこからくるのか気になっていました。インタビューで宮川さんは自分のお店について「高級感は出したいけど、素直な(気持ちが出せる)雰囲気がお客様に伝わるようなことは意識している」とおっしゃっていました。ちゃんと準備はしているし、何か主張しすぎることもない。美味しいと感じたことを素直に楽しめる、だから心地よい。ん?これって、宮川さんが言っていたさいたま市の魅力にちょっと似てませんか?そこで暮らしている人がいて、都内ほど主張が強くない。適度に都会で心地よく過ごせる自然もある。宮川さんがさいたま市で働く理由がなんとなく分かった気がしました。
このページの記事は2024年11月に取材し、2025年2月に公開したものです。
宮川さんにオススメのワインを
紹介してもらいました!
\ Tap wine /

鳥居平今村(とりいびらいまむら)
生産者の方にお会いしてワイナリーと畑を見学させていただいたこともあり、思い入れの深いブランドです。一押しポイントは何といっても、畑が素晴らしいこと!山梨県勝沼町はどこを見渡してもブドウ畑があるくらいブドウ栽培が盛んな地域ですが、直接町全体を巡ってみて、この「鳥居平」の畑は地理的条件の恵まれ方が別格だと感じました。日当たりの向きや標高、土壌の質などの違いに合わせてそれぞれ個性を持ったワインが作られているので、ちょっと踏み込んでワインを味わってみようという方の入り口としてもオススメです!

アレクサンドル・バン
もともとナチュラルワインに興味を持ちかけていたころ、いつも聴く宇多丸さんのラジオでたまたまやっていた「ナチュラルワイン特集」で名前が挙がっており、飲んでみたところハマりました。創り方がアヴァンギャルド過ぎて生産地域から名前を名乗ることを禁止されたという破天荒な逸話のある生産者です。「こんなワインもあるのか」という驚きを伴った楽しいワイン体験ができます。

レヴァンヴィヴァン
こちらは国内のナチュラルワイン界でかなり人気の創り手です。私は初めそんなことも知らず、単純にパッケージが可愛かったのでジャケ買いしたところ味も美味しくてファンになりました。生産量が少ないのでせっかく気に入ったワインがあっても一期一会だったりするのですが、「新作が出たから買おう」みたいな楽しみ方ができてそれも良いなと思っています。

ピュリニー・モンラッシェ
ピュリニー・モンラッシェ村は、ワイン好きには言わずと知れたブルゴーニュ屈指の銘醸地です。初めて飲んだのは都内に勤めていた頃ですが、当時の私が自分から飲むようなワインは早飲みタイプのものが中心で、渋味や酸味といった要素は単純に「飲みづらさ」だと思って避けていました。しかし、豊富な酸を特徴とするピュリニーを飲んだ時に「ワインに酸味があることがこんなに喜ばしく感じられるのか」と衝撃を受け、以来ワインに対して断然興味を持つようになりました。