

温かさ、豊かな表情
「手づくり」が持つ魅力
丁寧につくられた質の良い革製品、まるで宇宙が閉じ込められたかのようなガラス細工、シンプルながらも表情豊かな陶器の一輪挿し。そしてそんな様々な個性あふれる和モダンな雑貨を眺める人々。ここは浦和コルソ内にある「クラフト&フードつくりえ」。さいたま市在住の作家を中心とした和モダンテイストの手工芸品専門店です。
代表の塚田敬子さんがこのお店を始めたきっかけは、以前カナダに滞在していた時、日本人の「モノづくり」に対する熱意・温かさを再認識したこと。その想いをもっと多くの人に伝えたいと、さいたま市が主催する「ニュービジネス大賞」に「ハンドメイドと飲食スペースのあるコミュニティカフェ」として応募。最終選考まで残ったのを機に、2015年、北区盆栽町にお店をオープン、夢を実現しました。
しかし、半年後にもらい火で店舗が消失。落ち込む塚田さんにお客さんからの励ましの手紙が届きます。この時、手紙の持つ「手づくりの温かさ」を再度実感した塚田さんは、その想いを形にしようと、埼玉県比企郡小川町や秩父郡東秩父村でつくられている細川紙(小川和紙)と桐箱を使った手紙セットを考案。これが「埼玉県伝統工芸品等新製品開発コンテスト IMPACT SAITAMA」で優秀賞を受賞しました。そして新店舗での再出発や、ロフトやコルソ、マルイ、伊勢丹でのイベント出店を経て、つくりえ浦和店のオープンへと至りました。


お客さんの心と作家の想いがつながり、広がる
「作家の想いが込められた手づくりの作品は、非常に多くの時間と手間がかかります」と塚田さん。それゆえ値の張る作品も少なくありません。現在、つくりえに出品している作家は約 20人。思いついたデザインをペンで直接服に描き起こす洋服作家や、元プロキックボクサーのレザー作家といったユニークな人たちもいます。
「出品いただいている作家さんたちは皆さんプロです。作品づくりに覚悟を持って本気で取り組んでいます。つくりえのコンセプトをよく理解し、お客さまに喜んでいただける『愛』あふれる作品を納めてくれています。私たちは、作家さんの想いや作品の背景をいかにお客さんに伝えられるか、正しい価値を知ってもらい、どれだけファンを生み出してあげられるかが使命だと思っています」。
このように作家とお客さんの架け橋となれるようなお店作りを目指すつくりえでは、作家本人と交流しながらものづくりを楽しむワークショップも定期的に開催しています。これはお店とお客さんが頻繁にコミュニケーションをとるカナダでの体験をヒントにしたもの。作家とお客さんが交流することは珍しかった日本にも、海外の良い習慣を取り入れていけたらと考えて始めたのだそうです。
取材中、「この猫、飼っていた子に似ているの」と微笑み、猫の雑貨を大切そうに受け取っていったお客さんを見かけました。これだけの手づくりの作品が集まるお店は市内でも珍しく、品質とデザインを求める人から特に喜ばれているそうです。
塚田さんは、今は現在の店舗で「一点もの」の普及に注力したいと言います。出品する作家との縁も少しずつ広がっているそうで、つくりえを起点にして「作品を求める人の心と作家の想いのつながりの輪」がますます広がる未来にワクワクしました。
ものがすぐ手に入る豊かな時代だからこそ、手間と時間をかけた丁寧な「モノ」と「人」との血の通ったつながりが求められている、それを強く感じさせてくれるお店です。



Profile
塚田 敬子さん
- 2013年
- 「さいたま市ニュービジネス大賞」に応募
- 2015年
- 「和雑貨•手づくり雑貨とワークショップつくりえ」を北区盆栽町にオープン
- 2016年
- 「埼玉県伝統工芸品等新製品開発コンテストIMPACT SAITAMA」優秀賞受賞
- 2017年
- 「恋文KOIBUMI-Loveletter-」販売開始
- 2023年
- 「クラフト&フードつくりえ浦和店」オープン