

食の複合施設が街を変える
西浦和といえば、この街出身の私から見ても「浦和」と名が付く8駅の中では地味な存在…。「浦和ヒエラルキー」というものがあるとすれば決して上位ではない…そんな印象を持っていました。
そんな中2022年秋、西浦和駅前の広大なUR田島団地に隣接して突如現れたのが、食の複合施設「『団地キッチン』田島」です。シェアキッチン、ブルワリー、カフェの3つの機能が揃っているのは、団地のリノベーション施設としても全国的に珍しいとのこと。実は今、ここを拠点に食のスタートアップが生まれ始めています。
実態はどうなのか、そして西浦和の未来とはー。団地キッチン内のシェアキッチンの利用者と施設運営者に話を聞きました。

「今後は人生を豊かにする"パン作り"自体も広めていきたい」
「団地キッチンの応援で人生が変わった」
オープン当初からシェアキッチンを利用する「 土筆堂 」は、伝統の味を大切にしつつも食べやすくアレンジしたパンを作り販売しています。主宰の 井瀬翠 さんは、子育てと編集の仕事をしながら4年ほど自宅でパン教室を開いていましたが、2023年からシェアキッチンを利用しパンの販売を開始しました。すると、JR駅構内でのパン祭りイベントや各地のマルシェから出店の声がかかるようになり、急速にネットワークが拡大したそうです。現在はスープ販売も展開し、さらにケータリングへと活動の幅を広げています。
「シェアキッチンを利用する中で、担当の方から『一緒にやっていきましょう!』と勇気づけていただいたり、出店における具体的なアドバイスをもらい、夢にどんどん近づいています。また、これまでは一人でしたが、利用者同士のつながりや仲間ができ、別の強みを持った方とのコラボレーションも生まれています」と井瀬さんは言います。

団地活性化は街の魅力づくりから
施設の企画運営を行う日本総合住生活株式会社の副長 中野瑞子さんは、「この施設が田島団地活性化のトリガーになれば」と話します。
UR田島団地は、築 55年を超える総戸数約1900戸の大規模住宅団地で、現在、団地再生事業が進んでいます。
「団地再生が進む中、この地で暮らしたいと思ってもらうには、街の魅力づくりが欠かせません。多世代の方の居場所となるカフェをはじめ、小商いを始めたい方を後押しするシェアキッチンやオリジナルクラフトビールを醸造できるブルワリーなど、ここを拠点とした活動から魅力的で元気な街にしていきたい」と、中野さん。
オープンして約1年半、徐々に認知が広まり、今では毎月開催のマルシェや名物「団地プリン」、クラフトビールを目的に地域の外からも人が訪れるようになっています。


人生の豊かさにつながる街づくり
今回の取材を通して、「団地キッチン」田島を中心に起こり始めている、西浦和の街と関わる人の人生の変化が垣間見えました。また中心となって活動している人たちの想いや熱量にも触れられ、魅力的な街づくりにおいて大事なことは、一人ひとりがプレイヤーとして関わることだと感じました。これは西浦和に限ったことではありません。
私は、食をきっかけに魅力的な街づくりに取り組み始めた西浦和の未来に期待しつつ、自らも積極的に活動に参加していこうと思います。みなさんは自分の住む街をどのようにしていきたいですか?